棒の衝撃問題に関するラプラス変換域での解を利用すれば,静的な「材料力学」と同様の手順で,衝撃荷重を受ける棒の問題が解ける.これの逆変換を解析的に行うのは容易ではないけれども,パソコンによる数値ラプラス逆変換を利用すれば,容易に数値解が得られる.
以下にラプラス変換域での解法を幾つかの例とともに示す.
なお,ラプラス変換,数値ラプラス逆変換については,下記を参照すること. 
 
 縦衝撃を受ける一様棒の変位u ,変位速度v および応力 s のラプラス変換域での解は
   
 
  V0は棒の初速度.また,ひずみ e 及び引張力Nについては
  
種々の衝撃荷重に対する解はこれらの式を用いて,境界条件を満足するように未知係数 a1 , a2を決定することに帰着される.
  
図のように上端x = 0にステップ状の衝撃速度を受ける長さlの下端自由棒の境界条件は
 v( t
, 0) = V0 H(
t )  ここで,H( t ) はステップ関数,s( t , l
) = 0 
であるから,そのラプラス変換は
 
 注)ステップ関数のラプラス変換は1 / p .
したがって,式(1)より, 
 
これを解けば
 
であるから,応力の解は
 
となる.ラプラス変換の性質によればtに関するラプラス変換に1 / Aをかけpをp / Aと置いたものはt / Aに関するラプラス変換に等しいから,無次元時間 t = Ct
/ lに関する変換解は次式となる.
 
式[1]のx = 0.5lに置ける数値ラプラス逆変換を図式解法による結果とともに,同図に示す.
 
§不静定問題の解
上記の方法は不静定問題にも適用可能である.
○例題]段付き部にステップ状の衝撃荷重を受ける両端固定段付棒
 
棒1,2について座標系を図のようにとり,棒1,2の変位u1 , u2
及び応力 s1 , s2の解を
 
と置く.荷重点の力の釣合および変位の条件は
 
ラプラス変換して,
 
注)u1 と u2 は座標系の方向が逆なので,変位の条件はどちらかに負号がつく.
  そして,棒の左右端は固定されているので,変位は0であるから
 
[a]を[b],[c]に代入すれば,未知常数 a11 , a12 , a21 , a22 に関する次の連立方程式を得る.
 
これを解けばa11 , a12 , a21 , a22 がわかり,解が得られる.
C1 = C2
=C , E1 = E2
= E , l1 =
l2 = l ならば,
 
             [e]
したがって,無次元化時間 t = Ct
/ l に関する棒1,2の応力は
 
となる.
 
丸棒のねじりについては先に述べたように変数の置き換えを行えば,縦衝撃の結果がそのまま利用できる.
ねじり衝撃を受ける半径Rの丸棒の断面の回転角q ,回転角速度w および外表のせん断応力 t のラプラス変換域での解は
   
 
  ここで,W0は棒の初期回転角速度.また,外表のせん断ひずみ g 及びトルクTについては
  
これは,上の縦衝撃の場合と全く同形であるから,同じような手順で解が得られる.
 
 
 
はりの曲げは,波動方程式とはならないが,ラプラス変換域での解は求まる.
衝撃曲げを受けるはりのたわみw ,たわみ角 q ,曲げモーメントM ,せん断力Fのラプラス変換域での解は
   
  ここで,h1 ~ h4は,h4 + (
p2 / Cb2
) = 0の4つの根すなわち,
   
注)はりの途中に荷重は無いとした場合である.
種々の衝撃荷重に対する解はこれらの式を用いて,境界条件を満足するように未知係数
a1 〜 a4を決定することに帰着される.
注)Cbは伝ぱ速度ではないことに注意せよ.
○例題]先端にステップ状集中荷重を受ける片持ちはり.
  
図のように,先端にステップ状の集中荷重を受ける片持ちはりの境界条件は
  
したがって,
  
の解 a'1 〜a'4 を用いて
  
となる.上図に示す計算値は,連立方程式の解も数値的に得たものである.問題が複雑になる場合は,このように連立方程式の解も数値的に行えば計算ミスも防げ便利であり,計算時間はやや長くなるが解の精度はほとんど同じである.