足 

○ラプラス変換

○数値ラプラス逆変換法

 

§任意境界条件に対する解 

@時間域での畳み込みによる方法 

 任意の境界条件例えば,任意荷重波形に対する解は,ステップ関数あるいはインパルス関数状荷重に対する解との時間域における畳み込み積分によって得られる.

∵任意関数P( t ) は次式のように書ける.
  
 したがって,線形系の解をO[ ] と表せば,f( t )
  
 ここで,O[ ]の線形性より,右辺はO[ d( t ) ] = G( t ) とおいて,
  
 一方,任意関数は次のようにも書ける.
  
  
 したがって,f( t )
  
これは,下図の様に,関数 P(t) をデルタ関数列 d(t- kD)|D0の和で表す事と,ステップ関数列 H(t- kD)|D0の和で表す事に対応している.
  
また,時間域での畳み込みは変換域では積となることから,式(1)の両辺をラプラス変換すれば,
  
(2)の両辺をラプラス変換変換すれば
  
 ∵
  
  そして,O[ ] は線形であるから
  

]2本の棒の衝突による応力
 材料が同じで断面積が異なる2本の棒の衝突により棒2に生ずる応力は,前出の図式解法によって求まる.
例えば,棒1の断面積が棒2のそれの2 ,長さが0.6倍としたときの解析例は下図左下の黒実線のようになる(注 図は圧縮を正として画いている).
 
そして,衝突面には同図右下青で示す結果より,次式で表せる2段の階段状の圧縮応力が作用することがわかる.
  
 棒2の衝突面にこの応力が作用するとして解析すれば次のようである.
先ず,棒2の衝突面に大きさ1のステップ状あるいはインパルス状の応力が作用する時,境界条件はx = 0
  
したがって,これに対する応力の解を
  
とおけば
  
一方,自由端すなわちx = lでは応力が0であるから結局未定係数 a1 , a2 は,
  
となるから,
  
無次元時間 t = Ct / lに関する変換解は次式となる.
  
GA ( t )= G( t , 0.2 ) を上図右下に赤で示す.ただし,これは,N = 512点でのラプラス逆変換での値である*)
これと,衝撃端応力との畳み込みは
  
となる.図左下の赤丸は上の積分を数値的に行って得られた結果であり,図式解法による結果と一致している.

  注)時間域での畳み込みによって解を求める場合,ステップ応答とインパルス応答のどちらの方が精度良い解が得られるかは必ずしも明らかではない.ステップ応答に対する解の方が精度良いとおもわれるが,この場合荷重の微分値が必要であり,実験値の場合などはその数値微分には十分注意する必要がある.

   *)この場合厳密解は,インパルス列になるので,各位置で幅が0高さが∞で面積が1となる.しかしながら数値計算においては∞の値は実現できないので,数値逆変換解は図のような高さ有限で幅も0ではないパルス状となる.計算点数N が大きくなるに連れて高さは大きくなり,また幅も相対的に小さくなってインパルス列に近づく.したがって,計算点数が大きくなるにしたがって,畳み込み時の計算精度も良くなる.

○波形の階段状近似による解

 境界条件が階段状に近似できる場合には上の畳み込み積分を変換域で行い変換域での解を得ることが出来る.

 

]ピンの打撃による衝撃トルクの発生
横ピンの打撃により生ずる横棒のせん断応力

  
であり,衝撃端の値は例えば下図左下のようになる.
  
この解は落下棒とピンの接触が保たれるとした場合の解である.しかし,図によれば,t > 2 では応力の負号が変わるので実際にはこれ以降落下棒とピンの接触は断たれることがわかる*).したがって,これ以降衝撃端のせん断応力は0であるから,横棒衝撃端に加わる応力 tB ( y ) = t ( y , 0 )は図中に示す6段の階段状波形,すなわち次式である
  
したがって,負荷関数は
  
一方,先端に大きさ t0 のステップ状せん断応力を受ける他端自由棒のx = z lにおけるせん断応力の無次元化時間 y = CS t / lに関するラプラス変換解は,縦衝撃の解と同様に**)
  
であるから,棒が離れる事も考慮した解は
  
x = 0 , 340 mm における計算値を上図右下に示す.

  注 * ) これは,横棒衝撃端の回転速度が,横棒右端からの反射波の到達によって加速されるためである.

   * *前述のように縦衝撃問題とねじり衝撃の問題は本質的に同じである.

例題]2本の棒の衝突による応力と変位速度 

 

§立ち上がり時間の近似

 実際の衝突現象では接触現象などのためにステップ状に応力が立ち上がることはなく,なんらかの立ち上がり時間を有する.これを厳密に解析するのは困難である.ここでは,立ち上がり時間を擬似的に導入する手法を考える.

 ステップ関数のかわりに立ち上がり時間を考慮した関数として,次式を導入する.
  
     
 式(3)はステップ関数のラプラス変換に (1+Tp )-1 をかけたものであるから,ステップ関数に対するラプラス変換解に(1+Tp )-1をかければよい.解が無次元時間 t = C t / l に関するものの場合は,Tの代わりにこれをを無次元したCT / lに置き換えればよい.

 

 

○例題]一端に立ち上がり時間a l / Cの定応力を受ける他端固定棒

   
棒の変位速度および応力を
  
とおく.境界条件は s( t , 0) = s0 h( t , a l / C )  v( t , l ) = 0 であるから,そのラプラス変換は
 
したがって,a1 , a2
  
となるから,応力の解は
  
無次元時間 t = Ct / lに関する変換解は次式となる.
 
a = 0.10.2の場合のx = 0.5lに置ける解をステップ状荷重の場合の図式解法による結果とともに,上図に示す.