力の表示方法と釣合式
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力はベクトルであり,通常,力を式中あるいは図中に表示するには太字で A , B , P のようにベクトルとして表示する.しかしながら,材料力学においては,その作用方向は自明である事が多く,その大きさを表示した方が簡潔明瞭な事が多いので,ここでは,文字は大きさのみを表すことにし,A , B , P 等と表示する方法を用いる.

 ただし,ベクトルの大きさは一般には,A = |A|B = |B|P = |P| で定義され正又は0の値であるが,ここでは,これらの記号A , B , Pは負の値も取りうるものとし,負の場合,作用方向は定義した方向と逆向きであることを意味するものとする.

○例として,次のように,棒の両端と途中2カ所に荷重を受ける棒の右端に作用する力を求める場合を考える.
左端と棒の途中に加わる力は判っているものとして,右端に作用する力を求める事になるが,これを,右方向に作用すると仮定した場合と,左方向に作用すると仮定した場合について釣合式を求め解を導く.(もちろん何れの場合も結果は同じにならねばならない)

  

○力をベクトル表示して問題を解く場合

  力を表す文字をベクトル表示した場合の図と釣合式及びその解は下図のようになり,

 文字はベクトルを表しているから,釣合式や解はいずれも同じ表示となる.すなわち,この場合は図におけるベクトルの方向がいかなる場合でも式は同じである.

 この方法は,いかなる場合にも釣合式とその解は同じ式で表せるので,一見簡単なように見える.しかしながら,最終的には個々のベクトルの成分を代入して計算する必要があるし,実際の力の作用方向を直感的に捉えるのにも不向きである.

 本方法は,構造が複雑で大がかりな問題を解く場合には便利であり,計算機用のプログラムの作成などはこの方法を用いた方が便利である.

○力の作用方向を考慮しながら,大きさを求める場合.

  力を表す文字を大きさで表す場合の図と釣合式及びその解は下図のようになり,

 仮定したPR の方向が逆であるので,結果は正負逆となる.

 そして,実際の力の作用方向は,
 ( PL + P2 ) - P1 が正ならば,(a)のように右端の力は右向きに
 ( PL + P2 ) - P1 が負ならば,(b)のように右端の力は左向きに
作用する事になる

 このように,常に力の作用方法を考えながら式を立てる必要があるが,解を見ればその作用方向が直ちに判明するし,実際の力の作用方向を直感的に捉えることができる.

 なお,得られた結果が負の値となる場合は,力は当初考えた作用方向とは逆向きに作用している事になる.

内力の作用方向(引張りと圧縮)

 内力も力であるから,ベクトルであり,上と同様の議論が成り立つが,仮想断面を基準とする所が異なっている.軸力が作用する場合,引張り力であるか,圧縮力であるかは如何にして判別すべきであろうか?

○内力をベクトル表示して問題を解く場合

   下図の場合,仮想断面aに作用する軸力Nは図中に示す式で与えられ,ベクトル表示では二つの仮想断面に作用する軸力は符号を逆しておく必要がある.

   しかしながら,これらは作用反作用によって生じ元来同じ力であり,これをN , - N のように符号を別にして表示するのは若干不便である.

   もともと,ベクトルそのものには正負の概念は無く,- AはベクトルAの逆向き,あるいは成分の符号が全て逆,を意味するにすぎない.

  

○内力の作用方向を考慮しながら,大きさを求める場合.

  軸力についても,文字は大きさのみを表すものとすれば,下図のようになる.

  軸力が仮想断面に対し物体の外向き方向に作用すれば引張り,内向き方向に作用すれば圧縮であるから,いずれの状態であるかも直感的に直ちに分かる.

   

 

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