モーメント
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T.並進力とモーメント

§並進力

 ニュートンの第2法則は,
 
であり,図(a)のように物体の重心Gをとおるx軸方向に大きさPの力が作用すれば,物体には
  a P / m
x方向加速度が生じ物体のx方向移動速度は変化する.
このように,物体に加速度を生じさせる源が力であり,図のような場合物体は移動するのでこの力を正式には並進力と呼ぶ.

§モーメント

 図(b)のように大きさが等しく向きが逆の一対の力が物体の重心を挟んだ等距離に作用する場合物体の動きはどうなるであろうか?
このような場合は,物体は移動しないで,その場で回転する.ニュートンの第2法則は次のようになる.
 

図の例では,上の定理は次式となる.

  wI Ph

  w:物体の回転角加速度(単位時間当たりの角速度の変化)
  I :慣性モーメント

右辺のPh は(力×距離)であり,このように
 

で与えられ回転角加速度を与える物理量をモーメントと呼ぶ.

 図(b)では簡単の為に1対の力を考えたが,モーメントは必ずしも1対の力によって生ずるとは限らない.例えば,図(C)の例では,物体は,x軸方向の並進力Pと同時に,重心回りのモーメントM = Ph / 2も受け,移動速度が変化すると同時に回転角速度も変化する.

 なお,力が小さくても回転中心からの距離が大きければモーメントは大きくなる.これは日常テコの原理として経験している事に合致する.

 以上のように,物体の移動に関係する力を並進力,回転に関係する力をモーメントあるいは偶力と称する.

 以下,単に力と言う場合は両方を含む場合と並進力のみの場合もありやや厳密性に欠けるが,文脈から判断されたい.

U.静力学と力の釣合

 さて,材料力学では主に静的な状態,すなわち物体が動かない状態(あるいは定速度運動や定速回転している場合)を取り扱う.したがって,加速度及び回転角加速度はともに0であるから,ニュートンの第2法則より,以下の力の釣合式が適用される.
 

[例1

例えば,両端に荷重PQを受け釣り合っている下図のシーソーについて,力の釣合を考えてみよう.


 問題はPまたはQのどちらか一方を与えた場合,このシーソーが静的釣合を保つには,他方はどのような値にすべきかと言うことになる.すなわち,両者を自由に選ぶことは出来ない.
さて,このシーソーに加わる力は,PQ及び支点から受ける反力Rである.
したがって,力の釣合(並進力の釣合)は
  P + Q = R   (1)

である.
 次にモーメントの釣合を考える.モーメントの釣合を考えるには,回転の中心を考える必要があるが,取り敢えず支点C回りで考えれば,

  Ph1 Qh2 (2)

となる.以上(1)(2)を解けば答えは,
  

となり,QRが求まる. モーメントの求め方

[例2

図のように,一端を壁に固定された棒を片持ちはりと呼ぶ.この棒が壁から受ける反力を求めよう.

図のように,壁を取り去った代わりに静的力の釣合を満足するような力(これを反力と呼ぶ)を置いた力学的等価図を考える.今の場合
 Pに釣り合うために,棒は壁からPとは逆向きの力Rを受けているはずである
そして,力の釣合より明らかに,
  R = P 
次にB点を中心としたモーメントを計算すれば,これは
  反時計回りに Pl 
となり,このままでは棒は回転してしまう.したがって,棒はこれと対抗する時計回りのモーメントMを壁から受けていなければならない.そして,その大きさは明らかに
  M = Pl ただし,Mは時計回り
このような反力を反モーメントと呼ぶ.
 このように,静力学問題を解くためには,並進力の釣合と,モーメントを釣合を同時に考える必要がある.

モーメントの釣合式補足他

○ 式(2)では支点回りのモーメントの釣合を考えたが,実はどの点回りのモーメントの釣合を考えても同じ結果となる(ならねばならない).
例えば,図のC’点回りで考えれば
  
となるが,これに並進力の釣合式(1)を代入すれば,(2)が得られる.問題によって適当な点を選んでモーメントの釣合を考えれば良い.

○ モーメントをその作用方向と共に表示する場合,視覚的にわかるように矢印付きの円弧で表示する方法と右ねじが進む方向の矢印で表示する方法がある.
右ねじとは通常のねじであり,右回しすると前進するねじの事である.

○ 一般に,物理量**に対し,(**)×(距離)で定義される量を**モーメントと呼び,**が並進力の時を単にモーメントと呼んでいる.また,(**)×(距離の二乗)を**二次モーメントと称し,材料力学では,**が面積である面積モーメント,断面二次モーメントが重要な役割を果たす.

[問題]

 はりには,上の様に一点に集中して作用する集中荷重の他に,単位長さ当たりの力としてはり全体に分布して作用する分布荷重もある.下図の様に,合計してPの荷重がはり全体に均等に分布している,すなわち,単位長さ当たりq = P / lの等分布荷重が作用するとき,固定端Bにおける反力Rと反モーメントMを求めよ.



すなわち,反モーメントは全荷重が先端に加わっている場合の半分となり,はりは強くなる.

 

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