(注意:元に戻るときブラウザの戻るボタンを使わないように)

 

○ベクトルのスカラー三重積
任意の0でない三つのベクトルabcについて,次の量[a,b,c]をスカラー三重積と定義する.

スカラ−三重積について,次の関係が成立する.
1)
2)
a,b をスカラーとして
 
3) a
bcが一次従属のときに限り[a,b,c]=0
4)
スカラー三重積は三つのベクトルabcを綾とする平行六面体の体積である.
 また,abを2辺とする平行四辺形の面積は
 
 とも書ける.


  
ベクトル(a×b)は外積の定義より,
大きさは ab を2辺とする平行四辺形の面積
方向は  この平行四辺形に直角で右ねじが進む方向
のベクトルである.したがって,これとベクトルcの内積は,この平行四辺形の底面の面積と高さの積となるから,この平行六面体の体積である.

 

○テンソルの不変量
テンソルTついて,任意の0でない三つのベクトルをabc,として
  
となるスカラー,IIIIIIをテンソルTの第1,第2および第3不変量と定義する.第1不変量をtr(T),第3不変量をdet(T)とも書く.
これらを成分で表せば次のようである.
  

 ∵( 以下の式の展開においてはスカラー三重積の性質,主として
   
  に注目する.)
 Tek =Tjk ej (ここで,k , j x , y あるいはz )であるから
  
 同様に
  
 そして,
  

 

○テンソルの固有値
  
をテンソルTの固有方程式と呼び,これの解l をテンソルTの固有値と呼ぶ.
そして,固有値l について次式を満たすベクトルp
  
を固有ベクトルと呼ぶ.

 注)pTによる変換によっても方向は変わらず,値がl倍になるに過ぎない特別の方向を意味する.

 

○対称テンソルの主値,主軸
対称テンソルTの3つの固有値は全て実数であり,(重根を含む).互いに直交する3つの固有ベクトルを持つ.これらをテンソルの主値あるいは主軸と呼ぶ.
これら,主値および主軸をl1l2l3 およびp1p2p3とすれば
  
マトリクス形では(p1p2p3を基底ベクトルとする座標系で)
  
となる.

 ∵

§先ず,不変量の定義から
  
となるl
  
の解であることを導く.
第三不変量の定義より,任意のベクトルabcについて
  
ここで,左辺は
  
  
となるから,これが0となるためには
  
でなければならない.

§固有値l が決まれば,それに対応する固有ベクトルは
  
を解けばよい.したがって,p=pxexpyeypzez は次式の解として決定できる
  
そして,これが解を持つことはdet(T-lI)=0より明らかである.

 

§Tが対称ならば3つの固有値はいずれも実数となることは次のようにして証明できる.
まず,固有方程式の係数は実数であるから,
  
すなわち,l が複素根とすればそれの共役複素数も根である.したがって,
  
そして,
  
が成立する.ところがTは対称テンソルであるから,上の第1式より
  
したがって,
  
とならねばならず,これはl が複素根との仮定と矛盾する.故にl は実根である.
したがって,l は重根の場合も含めて,三つの実根l1 , l2 , l3 がを持ち,これに対応して三つの固有ベクトル,p1 , p2 , p3 が存在する事になる.

§対称テンソルの三つの固有ベクトル,p1 , p2 , p3 が互いに直交する事は次のようにして言える
 T は対称テンソルであるから,(T a)ba(T b)
が成立する.
先ず三つの固有値が全て異なる場合,値が異なる二つの固有値を a , b それに対応する固有ベクトルを a , b とすれば,
 
すなわち,ベクトルa , b は直交する.これが,どの二つについても言えるから,三つの固有ベクトルは互いに直交する.
次に,三つの固有値の内二つが同値,例えば l1 = l2 ならば,p3 に直交する面内でp1 , p2 を任意に選べる事は明らかである.
最後に,三つの固有値が全て等しくl = l2 = l3 が成立するならば,p1 , p2 , p3 を任意に選べる.この場合固有方程式は
 
となるから,T=aI すなわち単位テンソルの実数倍である.このようなテンソルを球テンソルと呼ぶ.

§基底ベクトルをekとすれば,単位テンソルI
  
とおけるから,主軸を用いて
  
となる.したがって,
  
そして
  

 

 

 

 

戻る