降伏条件

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 塑性変形は静水圧成分には無関係と考えられるので,塑性変形に関する理論では応力テンソルから静水圧成分を除いた偏差応力テンソル,偏差ひずみテンソルを用いる.(ただし,塑性ひずみは体積変化0と考えられるので,塑性ひずみテンソルと偏差塑性ひずみテンソルは等しい.)ここでは,偏差応力テンソル,偏差ひずみテンソルの定義を示し,降伏条件をこれらの不変量を用いて表す.

§偏差応力テンソル,偏差ひずみテンソル

 応力テンソルから静水圧成分1)を差し引いたものを偏差応力テンソルと呼び,次式で定義される
  
  マトリクス形では
  
テンソルの不変量の定義より,偏差応力テンソルの不変量J1J2J3は次のようになる.
  
  ただし,J2の定義は符号を反転させてあるので,偏差応力テンソルの固有方程式は
  
  となる.
 そして,塑性変形は静水圧には無関係である(深海の岩等を考えよ)と考えられるので,降伏条件も偏差応力の不変量を用いて表せると考えるのが妥当である.
 同様に,ひずみテンソルについても静水圧成分を差し引いたものを偏差ひずみテンソルと定義し
  
  マトリクス形では
  
ここで,フックの法則を適用すれば,偏差応力テンソルと偏差ひずみテンソルの関係は次のように簡潔な形となる.
  
また,
  
となる2).したがって,偏差応力によるひずみエネルギーは
   

 

§ミーゼスの条件と偏差応力テンソルの第2不変量の関係

  偏差応力テンソルは,応力テンソルから静水圧成分,すなわち,物体の膨張・収縮の成分を差し引いたものである.したがって,偏差応力テンソルによるひずみエネルギーは,物体のずり変形に関するエネルギ,すなわち,せん断ひずみエネルギを表す.
したがって,ミーゼスの降伏条件は
  
と言い換えることができる.一軸引張りではsxx=s その他の応力成分は0であるからJ2=s2/3.そして,s=sYのとき降伏するのであるから,ミーゼスの降伏曲面は次式で表せる.
  

 

§偏差応力テンソルの不変量で表した降伏条件の一般形

  降伏条件は座標系にはよらず決定されるべきものである.また,塑性変形は静水圧成分にはよらない.したがって,降伏条件の一般形は次式で表せる.
  
ミーゼスの条件は,上式に置いて,J3を無視したもっとも単純なものと考えられる.
 参考のために,トレスカの条件(最大せん断応力説)を上の形式で表現すれば,
  
  
と表せる3)

 

例]薄肉円管の引張りとねじり
 
引張とねじりの組み合わせ負荷を受ける薄肉円管では,応力テンソル及び偏差応力テンソルは
  
で与えられる.ここで,s は円管横断面の引張応力,t は円管横断面の円周方向せん断応力である.
偏差応力テンソルの第2,第3不変量は
  
となる.したがって,ミーゼスの降伏条件J2=(sY)2/3
  
また,トレスカの降伏条件 4(J2)3 -27(J3)2 -9(J2)2(sY)2 +6(J2) (sY)4 - (sY)6 =0
  
したがって,
  
となる.
これらの降伏曲面を横軸にs,縦軸にを取った平面上で表せば,上図のような円又は楕円となる.
  

 

注1) 
静水圧pを受ける場合の応力テンソルは
  
となり,応力成分の値も座標系にはよらない.したがって,静水圧成分を差し引いた応力は
  
と表せる.
また,き裂や空洞のない完全に中が詰まった物体を深海に沈める等して大きな圧力を加えてもそれだけで物体が壊れる事はないと考えられる(原子レベルで崩壊が起きるような超超高圧を除く).したがって,通常の塑性変形は静水圧成分には無関係としてよい.

 

注2) 
  
よりsmemの関係は
  
となる*).したがって,
  
eyy ,ezz についても同様,またせん断成分については,
  
*)
emは体積変化,smは静水圧成分であるから,E/(1-2n)>0でなければならない.したがってこの式からn<0.5であることがわかる.

 

注3) 
最大せん断応力説は,主せん断応力の最大値が0.5sYになれば降伏するとする説であるから,これを形式的に表せば
  
と書ける.上式の左辺を展開すれば
  
  ここで

  

  

  
係数ABC
  
を用いて整理すれば
  
したがって,
  
となる.

 

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