図のように棒の両端に力PとP2(ただし今の場合明らかにP2=-P)を加え引張る場合を考えよう.
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P | ,すなわち,力が大きくなれば,例えば断面aで棒は切れ左右に飛んでいく.力が小さい時はなぜ切れないのであろうか!?
次の様な仮想実験によって力学的に考えよう.
1)棒が断面aで切断され左右に分離しているものと考える(仮想切断)と,
[このままでは,棒は左右に飛んで行き]元の状態ではあり得ない.
2)この状態でも棒が左右に分離しないで元の位置に止まっている為の力学的条件を考える.
○棒が飛んで行くのは,
[左の部分では左端に力P,右の部分では右端に力P2 ]
が,それぞれ,作用しているからである.
○実際には棒は動かないのであるから,
[仮想切断した断面にはこれらに対抗する力N,N2 が作用している]はずである.
○すなわち,
[仮想断面を介して互いに力を及ぼし合い]棒は切れないでいる.
この力を内力と呼ぶ.
○この力は
[切断されたそれぞれの部分で力の釣合を満たし],
[作用反作用の関係]にある.
図の例では,簡単な力の釣合い式よりN,N2 は次のように求まる.
そして,P2=-Pであったから,
すなわち,NとN2 は大きさが同じであり作用方向は逆向きである.
以上の仮想実験より以下の結論が得られる.
以上の説明では,図中および文中の「力をあらわす文字」をベクトルとして,太字でN,Pのように表示した.しかしながら,問題が単純な場合これらのベクトルの作用方向は簡単にわかるので,文字は大きさを表す事とし
P = |
P | あるいはN = |
N |
で表示したほうが手っ取り早いし理解しやすいと考える.
以下では,主にこの表示を用いる事にする.詳しくは力の表示方法を参照し,表示法について完全に理解しておく事.
文字は力の大きさを表すものとして,上の例を書き直せば下図となる.
○物体の外から加わる力を,内力に対し,[外力]と呼ぶ.外力には,
・明示的に加わる[荷重]と,
・壁など他の物体との接合部に発生する[反力]とがある.
○外力は内力とは別の種類の力である.言い換えれば,
・外力は物体を変形させる原因であり,
・物体はこれに対抗して元の形を保とうとする結果,内力が発生する.
○内力は仮想断面に付随して発生しその作用は仮想断面を基準に考える必要があるが,
○外力は断面とは無関係に,空間に固定して表示すればよい.
○物体が引張りの状態にあるのかそれとも圧縮の状態にあるのかは,
・内力の作用方向によって決まるのであって,外力の作用方向からは直ちに判定できない.
簡単な例として,一端を固定した棒の先端Aと途中Cの2カ所に図の方向の力を受ける下図を考える.
AC間には,N=P の引張力が作用し引張られているが,CB間は,PとQの大小関係によって次のようになる.
○P>Q の時
・CB間の仮想断面には物体の外向きに,大きさ P-Q の内力が作用し,
・CB間は引っ張られている
○P<Q の時
・CB間の仮想断面には物体の内向きに,大きさ Q-P の内力が作用し,
・CB間は圧縮されている.
○このように,内力が仮想断面から
・物体の外向きに作用するならば,その部分は引張られており,
・物体の内向きに作用するならば,その部分は圧縮されている.
内力の種類には次のものがある.
これは断面に垂直に作用する力であり,棒は引張りあるいは圧縮を受ける.
これは断面に平行に作用する力であり,棒はずり変形を受ける.(作用方向による物理的な違いはない)
図ではz軸についてのものだけ書いてあるが,一般にはy軸方向のものもある.
断面に平行な軸回りに作用するモーメントであり棒は曲げられる.
図の場合,棒は下向きに凸に曲がり(Pが逆向きで)Mが逆向きに作用するならば,上に凸に曲がる
曲げの場合は図に示すように,z方向の力の釣合よりせん断力Fも同時に生ずる.なお,図ではy軸回りの曲げだけを示してあるが,一般にはz軸回りの曲げもある.
断面に垂直な軸(x軸)回りに作用するモーメントであり棒はねじられる.(作用方向による物理的な違いはない)
以上のように,仮想断面には4種類の内力が,物体の外から加えられる外力と釣り合うよう,単独あるいは同時に発生している.