材料力学では,完全弾性体を取り扱うので,応力ひずみ関係は次のようになる,これをフックの法則と呼ぶ.
○
:垂直応力
:垂直ひずみ
:ヤング率
○
:せん断応力
:せん断ひずみ
:横弾性係数
○ヤング率,横弾性係数,ポアッソン比の関係
ただし,垂直応力は一方向のみに作用する場合である.
主な材料のヤング率と横弾性係数は次のようである.
|
E |
|
G |
|
|
|
GPa |
|
GPa |
|
|
鋼 |
206 |
21,000 |
80.36 |
8,200 |
0.30 |
銅 |
123 |
12,500 |
46.0 |
4,700 |
0.33 |
アルミニューム |
68.6 |
7,000 |
26.5 |
2,700 |
0.33 |
注)1[GPa]=1×103[MPa]= 1[GPa]=1×109[Pa] |
材料力学における解法の手順
物体に作用する力(外力)と応力,ひずみ,そして物体の変形(変位)との関係は上図のようになる.
上図では,外力と変形が直接対応していないことに注意されたい.すなわち,
がそれぞれ対応している.例えば物体に作用する力を与えて変形量を知るためには,
ことになり,逆に変形量から作用荷重を求める場合は
なお,問題によっては,このような一方向の手順では解が得られない場合もある.
例題
直径20 mm,長さ1 mの鋼製丸棒を10 knの力で引っ張るときの棒の伸びを求めよ.
解答
荷重をP,この棒の断面積をA,長さをl,応力ひずみをs,e,ヤング率をE,伸びをlとすれば,
となるから,これに与えられた数値
を代入すれば,棒の伸びは
すなわち,棒の伸びは,0.159
mmである.
なお,この棒は,ばね定数がKのばねと等価であり,ばね定数は
となる事がわかる.
棒を引っ張れば,図のような応力−ひずみ曲線が得られる.このとき,荷重Pのなす仕事すなわち棒に与えられたエネルギーは,棒の伸びをlとして
で与えられ,図のB点まで荷重を加えた場合,これは,図の曲線OABDOで囲まれた部分の面積に等しい.
B点から除荷すれば,除荷は直線BCに沿い,OCは永久変形(塑性ひずみ)として棒に残り,CDは回復される.したがって,図の三角形CBDのエネルギーも回復され,これを弾性ひずみエネルギーと呼ぶ.すなわち,棒は弾性ひずみエネルギーを解放することによってもとの形に戻るとも言える.なお,残りのひずみエネルギーすなわち図のOABCOの面積は,主に熱となって棒の内部で消費される.
ところで,荷重と応力の関係P=As,伸びとひずみの関係 l=le を上式に代入すれば
となり,uは棒中の単位体積当たりのひずみエネルギーである.そして,単位体積あたりの弾性ひずみエネルギー(図の三角形CBDの部分)は
である.すなわち,応力が s のとき,棒には上式で与えられる単位体積あたりの弾性ひずみエネルギーが蓄えられることになる.そして,弾性変形の場合は,塑性分はないから,単位体積あたりのひずみエネルギーと応力あるいはひずみの関係は
上式は,引張りを例にして導いたが,この関係は荷重の形式にはよらず常に成立する.以上まとめれば次のよう.
○弾性体の垂直応力がs(垂直ひずみe=s/E)であれば,そこには単位体積当たり
のひずみエネルギーが蓄えられる.
○また,せん断応力がt(せん断ひずみg=t/G)であれば,これによる単位体積当たりのひずみエネルギーは
である.
なお,sとtが同時に生じていれば単位体積当たりのひずみエネルギーはこれらの和である.