図のように,軸に直角な方向の荷重(これを,横荷重と呼ぶ)を受ける長い棒状の部材をはりと呼ぶ。
ここでは、
真直はり:軸線が直線であるはり
対称曲げ:横断面は荷重方向に対し対称
な場合について述べる。
はり横断面に生ずる内力は,曲げモーメントMとせん断力Fである.図のような集中荷重を受ける単純支持はりを例に,その概要を説明する.
@はりの両端は単純支持されているので,このはりは両端に反力RA,RBを受けている.
はり全体について,力とモーメントの釣合を考えれば,これらは次式となる.
Aはりをx<aの位置aで仮想切断し,仮想断面にせん断力F,曲げモーメントMを置き(以下はりの問題ではせん断力及び曲げモーメントは図の作用方向を正とする)力の釣合を考える.そうすれば,下図が得られるから,
z方向の力の釣合より
そして,切断位置a点回りのモーメント*)の釣合より
*) 正確にはa断面における y 軸回りのモーメントと記すべきであるが,以後簡単にa点回りのモーメントと記す
B同様に,x>aであるb点で仮想切断すれば,切断図は下図のようになり,
z方向の力の釣合より
b点回りのモーメントの釣合より
なお,b断面で仮想切断し右側を考えた場合は,作用反作用により,FとMの作用方向が逆であるから,下図のようになり,同じ結果が得られる.
C以上まとめれば,このはりのせん断力と曲げモーメントは,次式で表せることになる.
そして,曲げモーメント,せん断力がわかれば,曲げ応力,せん断応力,たわみ曲線がわかる.
一般に,せん断力と曲げモーメントは,はり軸方向に沿って変化しxの関数となる.その様子を把握するためこれを図で表す.上の式[F]は下図のようになる.これをせん断力図S.F.D及び曲げモーメント図B.M.Dと呼ぶ.
S.F.D.,B.M.D.を見れば,最大曲げモーメントとその発生位置など,それらの変化の様子が直ぐにわかるので便利である.
また,上の図を注意深く見れば以下のことに気づく.
A]両端で曲げモーメントが0(単純支持であるから)
B](曲げモーメント図の接線の勾配)=(せん断力)
C](左端せん断力)=(左端反力)
D](右端せん断力)=−(右端反力)
E](集中荷重作用点のせん断力の段差)=(集中荷重)
ここで,B],C],D],E]
は,はりや荷重の種類によらず常に成立する。また,A]も
F](左端曲げモーメント)=(左端反モーメント)
G](右端曲げモーメント)=−(右端反モーメント)
の特殊な場合(すなわち,今の例では両端の反モーメント=0)であり,F],G]も常に成立する.
H]そして,関係B]より,せん断力が0となる位置で曲げモーメントは極値をとるから,
せん断力が0となる(あるいは,0を横切る)位置で曲げモーメントが最大
となる可能性がある.
(これらの関係は,せん断力図,曲げモーメント図を描く場合の重要な指針となるし,計算ミスを防ぐ手助けにもなる.)
例]下図のように,両端に定モーメントm1,及びm2を受ける単純支持はりでは,
左右端の反力は
であるから,
であり,これは,C],D]を満たしている.
一方,はりは左端に反モーメントの代わりに定モーメントm1が作用しているのであるから,
F]より左端曲げモーメントはm1に等しい,
そして,
B]によれば,曲げモーメント図の接線の勾配がF=(m2−m1)/lに等しいのであるから,
曲げモーメント図は左端でm1,右端でm2となる直線であり,これは同時にG]も満たしている.
したがって,S.F.D.,B.M.D.は図のようになることが直ちにわかる.(仮想切断して確かめよ)
例]図のような突き出し部先端Aに集中荷重Pを受ける突き出しはりでは,
突き出し部AC間のせん断力と曲げモーメントは
そして,支点Cにおける曲げモーメントは
であることは直ぐに判る.
したがって,C点で仮想切断すれば,
CB間は左端に左回りの定モーメントPaを受ける単純支持はりと同じであるから(C点のせん断力は支点位置に作用するから,これによる曲げは生じないので無視できる),
CB間の曲げモーメントは 左端で−Pa,右端で0の直線であることが判る.
この直線の勾配がせん断力であるから,CB間のせん断力は
である.そして,D]より右端反力は
また,C点の反力は上向きの集中荷重とみなせるから,E]より
なお,このようにして求めた支点反力はz方向の力の釣合
およびB点回りのモーメントの釣合
を満たしている.