不静定問題
§不静定力が1つの場合
例1]先端をばねで支持された片持ちはり
図のように,途中に集中荷重Pを受ける片持ちはり先端をばね定数Kのばねで支える.ただし,ばねとの接合は回転自由であり,上下方向の変位のみが拘束されるものとする.
このとき,ばねに加わる力をRとすれば,はり先端には反力Rが作用する.したがって,このはりは,先端に上向きの集中荷重Rと,途中に集中荷重Pの2つの集中荷重を受ける片持ちはりとなる.
このはり全体の上下方向の力の釣合及びモーメントの釣合式は,次のようである
ここで,RB:固定端の反力
MB:固定端の反モーメント(時計回りを正とする)
これらの式中R,RB,MBは未知数であり,上の二式,すなわち,力の釣合式のみでは,これらを決定できない.
すなわち,この問題は不静定問題であり,力の釣合の他に変位の条件を考慮する必要がある.今の問題では,これは
であることは直ぐに判る.そこで,ばねに加わる力Rを不静定力として,上式を表せば,片持ちはり先端のたわみ,たわみ角の公式より
そして,ばねのたわみはd=R/Kであるから,
となり,不静定力Rが求まり,解が得られる.
§不静定力が2つの場合
例2]集中荷重を受ける両端固定はり
図の集中荷重を受ける両端固定はりの場合,左右端の反力及び反モーメントをそれぞれRA,MA,RB,MBとすれば,はり全体の力の釣合およびモーメントの釣合式は
となり,全ての反力および反モーメントを決定するためにはあと二つの変位の条件式が必要となるが,それらは不静定力の選び方により異なる.
1)右上の図では,RA,MAを不静定力に選び,この場合変位の条件は
先端に時計回りのモーメントMA と上向きの集中荷重RA
および途中に集中荷重P
を受ける片持ちはりに置いて,
となる.
2)一方,右下の図では, MA, MBを不静定力として選び,変位の条件は
両端に図の方向の曲げモーメントMA,MB
および途中に集中荷重P
を受ける両端単純支持はりに置いて,
となる.
1)の場合,先端に集中荷重を受ける片持ちはりの解と先端に定モーメントを受ける片持ちはりの解を利用すれば,
であるから,この連立方程式を解き
を得る,そして,はり全体の力の釣合,モーメントの釣合より,
を得る.
2)の場合は途中に集中荷重を受ける単純支持はりの解と両端に定モーメントを受ける解を利用すれば,
であるから,この連立方程式を解き,反モーメントMA,MBが求まる.そして,はり全体の力の釣合,モーメントの釣合より反力RA,RB,が求まる.当然ながら,これらは,1)の結果と同じである.
§連続はり, 三モーメントの定理
支点が3つ以上あるはりを連続はりと呼び,これは不静定問題である.連続はりについては,これを各支点間(これをスパンと呼ぶ)毎に仮想切断して,クラペイロンの三モーメントの定理を用いて,各支点位置における曲げモーメントを求める方法が有効である.
上図(a)のように,左端から順に番号0〜Nを付けたN+1個の支点で支えられた連続はりにおいて,隣接する3つの支点k-1,k,k+1位置における曲げモーメントMk-1 ,Mk ,Mk+1 (k=1〜N-1)ついて,次の関係が成立する.
連続はりの支点の数はN+1であるから,未知の曲げモーメントもN+1個である.一方,式(1)は,N-1個成立し,左右端の曲げモーメントは境界条件として与えられる.したがって,これらより全ての支点位置における曲げモーメントが分かる.そして,支点反力は式(2)から得られる.
例1]左側のスパンのみに等分布荷重を受け,各スパンの長さが等しい連続はり.
各スパンを切出せば,上図下のようになるから,各スパンの緒量は下表のようである.
このはりの左右端は自由であるから,両端の曲げモーメントは0であり,
支点0-1-2について三モーメントの定理を適用すれば
支点1-2-3について三モーメントの定理を適用すれば
[a],[b]を解けば
そして,式(2)より各支点における反力は
例2]両端に対向する定モーメントを受ける下図の対称連続はり.
各スパンを切出せば,上図下のようになり,それらの緒量は下表のようである.
このはりの左右端には図のような,定モーメントが加わっているので,両端の曲げモーメント(内力)は
である.
支点0-1-2について三モーメントの定理を適用すれば
支点1-2-3について三モーメントの定理を適用すれば
[a],[b]を解けば
そして,式(2)より各支点における反力は
明らかに解は左右対称であり,かつ,支点反力の総和は0(上下方向の荷重が作用していないから.)である.
例3]右端固定の連続はり
各スパンを切出せば,上図下のようになり,それらの緒量は下表のようである.
左端は単純支持であるから,M0=0である.
支点0-1-2について三モーメントの定理を適用すれば
支点1-2-3について三モーメントの定理を適用すれば
右端は固定端,したがって,M3は未知数であり,[a],[b]から解は得られない.そこで,式(3)を適用すれば
[a],[b],[c]より
となり解が求まる.