動力伝達軸

§動力

 回転によって,動力(Power)すなわち単位時間当たりの仕事(エネルギ)を伝える軸を動力伝達軸とよび,動力伝達軸にはねじりモーメントが発生する.先ず,動力の単位及びその換算は下表のようである.
 

§動力伝達軸に生ずる応力と比ねじれ角

 伝動軸の単位時間あたりの回転数をn,伝達動力をHとすれば,軸に加わるトルク T は次のようである.
軸中心から,Rの位置に荷重Pを加えたまま1回転させれば,荷重がなす仕事は
 W =2 pRP
この軸に作用するトルクはT = RPであるから,これは次のようにかける.
 W = 2pT
したがって,この軸が単位時間あたりn回回転すれば,単位時間当たりの仕事は
 H = 2pnT
である.そして,この軸に生ずる最大せん断応力は
 
比ねじれ角は
 
 ここで,D:軸外径,c:軸内外径比(中実ならば0
となる.

 回転数をn rpm ,伝達動力をH kW ,外径をD mm  ,横弾性係数G GPa とすれば,
 
であるから,
  
  
ここで,1 rad = 180 / p 度 であるから
  

 回転数をn rpm ,伝達動力をH Ps ,外径をD mm  ,横弾性係数をG kgf/mm2 とすれば,
 
であるから,
 
 

§回転数をn rpm ,伝達動力をH Ps ,外径をD mm  ,横弾性係数をG GPa とすれば,
 
であるから,
 
 

動力伝達軸の設計式(軸径の決定)

 回転数をn rpm ,伝達動力をH kW ,外径をD mm ,横弾性係数G GPa
許容せん断応力をta MPa ,許容比ねじれ角をwa / m とすれば
tmaxta でなければならないから
 
w wa でなければならないから
 

 同様に回転数をn rpm ,伝達動力をH Ps ,外径をD mm ,横弾性係数をG kgf/mm2  
許容せん断応力をta kgf/mm2 ,許容比ねじれ角をwa / m とすれば
 
かつ
 

 また,回転数をn rpm ,伝達動力をH Ps ,外径をD mm ,横弾性係数をG GPa
許容せん断応力をta MPa ,許容比ねじれ角をwa / m とした場合は
 
かつ
 

コイルばねの応力とたわみ

§コイルばねの内力と応力

 コイルばね素線に生ずるねじりモーメント,せん断力とせん断応力
  
 図のように,直径 d の素線でできた,半径 R のコイルばねの中心軸に沿って引張荷重 P が働けば素線横断面には
 せん断力F = Pと,ねじりモーメントT = PR
が同時に作用する.ねじりモーメントT による最大せん断応力は,断面の外表部円周方向に
  
一方,せん断力F によるものは,近似的に,断面上で一定で,荷重と反対方向に
  
である.そして,せん断応力はこれらの和であるから,最大値は内側の外表部 A点に生じ
  

 実験式
 上の式はmが小さいときには十分適用できるが,m が大きくなると誤差が大きい.m が大きい場合は、素線の曲がり等を考慮した次式が用いられる.
  

§コイルばねの変形とたわみ

 素線のねじれ角とばねのたわみの関係
 図のように,素線横断面がdj 回転した場合,荷重点の移動量dd ,すなわち,たわみは
  
で与えられる.ここで,dj はコイルばね素線を微小巻き角度da を切取った長さが R da である微小部分の相対ねじれ角であるから
  
したがって,この微小部分の素線のねじれ角によるばねのたわみは
  
コイルばね全体のたわみは,これをコイルばね全長に渡って積分すればよい.したがって,次式を得る.
 

 バネ定数
 このコイルばねのばね定数はK = P / d で定義されるから,
 
コイルばねの材質と形状(ばねの半径と巻角の関係)を与えれば,これらの値がわかる.

 例1]R d が一定(円筒コイルばね)
  

 例2]
全巻数N,両端の直径がD1D2の直径2Dの円錐形状コイルばね
 
巻き始めからの巻角をa とおけば,ばねの半径R
  
と表せる.したがって,