不静定問題の解法

力の釣合式だけを考えたのでは,解が求まらず,変形の状態(以下変位の条件と呼ぶ)も同時に考える必要がある問題を不静定問題とよぶ.これに対し,力の釣合式のみから全ての解が求まる問題を静定問題と呼ぶ.以下に不静定問題の解き方を示す.

変位の条件を不静定力で表して解く方法
  
 図のように,両端を固定され段付き部に軸方向荷重Pを受ける棒を考える.
この棒は両端ABから反力を受けているはずであるから,これをRARBとすれば,
  
力の釣合式は,これ以外には無く,このままでは,RARBは求まらない.
そこで,変位の条件を考える.この条件は今の場合
  
となる.そこで,この条件をRAを用いて表すことを考える.AC間の引張力はRAであるから,
  
一方,CB間の引張力はRAPであるから
  
である,ただし,A1l1E1AC間の断面積長さおよびヤング率でありA2l2E2CB間のそれらである.
そうして,棒全体の伸びはl1+l2であるから,変位の条件より
  
これを解けばRAが得られる.
  
そして,力の釣合式RA+RB=Pより
  
また,AB間,CB間の伸びは
   注1)
となる.ここで,l2には負号付くから,CB間は実際には−l2縮んでおり,当然のことではあるが,変位の条件は,
  
とも表せる.
以上のように,不静定問題では適当な未知力や応力を1つ(今の場合RA)選び,変位の条件を不静定力のみで表し,これを解けば解が得られる.このように選んだ力を不静定力と呼ぶ.

 

未知力に関する連立方程式を作って解く方法
 不静定問題の別の解き方としては,複数の未知量に対する連立方程式を作成し,これを解く方法もある.

上の例では,AB間の引張力はRACB間の圧縮力はRBであるから
  
したがって,変位の条件より
  
この式と力の釣合式からRARBに関する次の連立方程式が得られる
  
これを解けば,
  
そして
  
となり,不静定力を考えて得られた結果と同じになる.

注)なお,この場合はC点で仮想切断し,
  
  棒ACが受け持つ力をRA,棒CBが受け持つ力をRBとすれば,
     注2)
  このとき,明らかに,棒ACRAで引っ張られ,棒CBRBで圧縮されるから,C点の右方向変位dC
    
  となり,両者は等しい,と考えてもよい.
  このように,変位の条件はいろいろな考え方・解釈が出来る.

 

 不静定力を考えて解くか,それとも連立方程式を作って解くかいずれの方法でも構わないが,問題が複雑な場合には連立方程式による解法の方がわかりやすい.

 

注1)このような問題を出すと途中の計算間違いや変位の条件の考え違いによって
  
といった答えを出す学生が少なくない.
この場合,l1 A2 E2=l2 A1 E1,を満たすとき,例えば「両端を固定された1本の棒で考えれば,中央に荷重を加えたとき,分母が0になって,反力は∞になる」すなわち,「棒の中央に力を加えた途端,壁を壊す事が出来る.ひょっとして私は超能力者...?」といった物理的にあり得ない解となる.もちろん,「貴方は超能力者ではありません,計算間違いしているおっちょこちょいです!」であるから,解を得たら,その物理的意味を常に考え,非物理的・非論理的解であればどこか間違っているのであるから計算過程を見直すよう,常に心懸けることが重要である.

      そう言えば,昔「私は空中浮揚が出来る」と非物理的な事を公言する人物を「この人は偉大な尊師である.」などと信用した非論理的な東大生が沢山いて,大変な社会問題となったけれども.金沢大学の学生ならば,こんな場合は「そのような非物理的な事を公言する人物はペテン師,あるいは,お脳のイカレた人である....」と論理的に正しく判断し,決して信用しないように.

 

注2)上では,PRARBに分かれたと解釈した.同じ関係は,C点における力の釣合とも解釈できる.
 すなわち,AC間の引張力はRAであり,CB間の圧縮力はRBであるとして,C点を挟んで,AC間のa断面と,CB間のb断面の2つの断面で微小区間を仮想切断し切り出せば,切断図は下図のようになるから,RARBPが得られる.
  
 Cで仮想切断する場合の他の解釈としては,下図の様に
   (a) P CB間のC点に作用する.逆に,(b) P AC間のC点に作用する
と考えてもよい.
  
このとき,C断面に生ずる引張力(内力) N とすれば,作用反作用により, NAC間のC断面及びCB間のC断面にそれぞれ図のように作用するから,これに基づいて力の釣合を考えれば,壁から受ける反力を RA , RB として
  
となり,力の釣合式はいずれも同じ結果RA + RB = Pとなる.