§不静定問題への応用(最小仕事の原理)

 カスチリアーノの定理によれば,弾性体のひずみエネルギを荷重で表し,これを荷重で微分すれば,荷重の作用点の荷重方向変位が得られた.下図のような不静定問題にこれを適用すれば,はり左端のたわみは0であるから,この系のひずみエネルギーを左端反力すなわち不静定力Rで微分したものは0となるはずであり,その計算は次のようになる.
  
このはりの曲げモーメントおよび,それの反力Rによる微分はステップ関数Haを用いて
  
となり,支点反力Rが求まる.
 すなわち,∂U/R=0とおくことにより,不静定反力R が求まった.

この例ではRの作用点の変位は明らかに0であるので当然であるが,この関係は不静定力作用点の変位が0でない場合でも成立する.

○荷重P1 , P2 , ・・・ ,不静定力R1 , R2 , ・・・ が作用する弾性体のひずみエネルギ−をU(P1 , P2 , ・・・, R1 , R1 , ・・・)とすれば,全ての不静定力Rk , k = 1 , 2 , ・・・ について次式が成立する.
  
 この式は,ひずみエネルギURkに関する微分が0すなわち,Rk Uを最小にするように決まる事を示しており,最小仕事の原理(自然現象はエネルギーが最小となるようにふるまう)を表している.

 

∵ 下図のように荷重P1 , P1 , ・・・ が加わっている弾性体を,不静定力Rkが生ずる位置kで仮想切断し,領域12に分割すれば,作用反作用により,領域12k点にはそれぞれ作用方向が逆向きの荷重Rkが作用する事になり,領域12k点のRk方向変位 lk1lk2は領域12のひずみエネルギ−をU1U2とおいて,
 
で与えられる.そして,これらは同じでなければならないが,Rkの作用方向は領域12では逆向きであるから lk1 = -lk2 が成立する.したがって
  

例1]図のように先端をばね定数Kのばねで支えられ,途中に集中荷重Pを受ける片持ちはりがある.ばねに加わる反力を求めよ.
 

解]はりのひずみエネルギーを UB ばねに蓄えられるひずみエネルギ−を US と置けば,R は不静定量であるから,
  
である.ここで,先端からxにおける,はりの曲げモーメント及びそのRに関する微分は
  
であり,また,US とそのRに関する微分は
  
であるから
  
となり,重ね合わせ法による結果と一致する.
注)このように,この例では,ばねに蓄えられるひずみエネルギーをも考慮する必要がある.

 

[例題トラス]

[例題はり]

[例題フレーム]

[例題面外変形]

 

§相反定理

○相反定理
弾性体の2カ所,点12にそれぞれ荷重P1P2が単独で加わる場合を考える.このとき
 点1に荷重P1が作用するときの点2におけるP2方向変位をl2
 点2に荷重P2が作用するときの点1におけるP1方向変位をl1
とすれば,次の関係が成立する
  

  

∵点1に荷重P1 のみが作用するときの点1P1方向変位をl'1,点2に荷重P2 のみが作用するときの点2P2方向変位をl'2とする.そうすれば,「先ず1に荷重P1を加えた後点2に荷重P2を加えたとき」この弾性体に蓄えられるひずみエネルギ−は,ひずみエネルギ−は荷重が成した仕事に等しいことより,
  
である.ここで,第1項は最初P1を加えたことによるひずみエネルギ−,第2項は次にP2を加えたときP2が成す仕事によるひずみエネルギ−であり,第3項はこのとき既に点1に加わっている荷重P1が成す仕事によるひずみエネルギーである.荷重を加える順番を逆にして,「最初にP2を加えた後P1 を加えれば」おなじひずみエネルギ−は
  
とも書けるから,式(4)が成立する.