座屈応力
前節で示した長柱の座屈に関する式をオイラーの公式とよび,オイラーの座屈荷重は一般に
ここで,l:柱の長さ,E:ヤング率,I:断面二次モーメント
となる.
mは境界条件によって決まる定数であり,いくつかの境界条件におけるmの値を示すと次表となる.
表1 種々の境界条件に対する座屈荷重 |
||||
荷 |
[T] |
[U] |
[V] |
[W] |
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座屈荷重 |
|||
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m=1/4 |
m=1 |
m=2.045 |
m=4 |
§オイラーの座屈応力と柱の破壊条件
座屈荷重を柱の断面積Aで除した値,すなわち座屈直前に柱に生じている圧縮応力,次式を座屈応力と呼ぶ.
ここで,l は柱の長さと断面の高さの比を表し,柱の細長比と呼ばれ,これが大きいほど細長い柱である.
式(2)は,細長比 l が大きいほど座屈応力は小さくなり,小さい荷重で座屈することを示す.一方,l が小さくて,scr が降伏応力を越えるときは,柱は座屈せず,圧縮によって破壊されると考えられる.したがって,座屈が生ずる限界の細長比は,上式のscr を降伏応力sy とおき
となる.lcr は柱のヤング率,降伏応力および境界条件によって決まり,細長比がこれを越える場合は,柱は座屈によって破壊し,細長比がこれ以下の場合,柱は圧縮によって破壊することになる.したがって,柱の破壊条件は次式で与えられる.
以上の関係を図示すれば下図の黒実線となる.
§その他の実験式
Eulerの式では,破壊基準は l < lcr では圧縮のみ,lcr < l では曲げのみを考慮している.しかしながら,実際には圧縮と曲げが同時に作用しているので,特にlcr の近傍では実際の破壊応力は式(3)よりも小さいと考えられる.そのような場合の破壊基準として,以下のような設計式が知られている.
○ランキンの式
○ジョンソンの式
遷移域は,l=0での降伏応力を頂点とし,オイラーの曲線線に接する放物線になると仮定
○テトマイヤーの式
l が小さい領域を直線近似.