ステップ関数,デルタ関数

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 通常の問題は,いたるところ連続滑らかであり,微分可能の関数で表せるが,場合によっては,不連続な場合を取り扱う必要がある.このような問題では,ステップ関数やデルタ関数を導入すれば,普通の連続関数と同様に取り扱える.

○ステップ関数

 x<a0x>a1である下図の関数
  
 を,ステップ関数とよび,以下Haで表す
  

 一般には,a = 0の場合をステップ関数と呼ぶが,ここでは,これを上図のようにx軸方向に平行移動したものを含めてステップ関数と呼ぶことにする.また,ここでは,x = aでの値はどうなる?など,数学的厳密性には立ち入らない.

応用例]途中に集中荷重を受ける下図の単純支持はりのせん断力および,曲げモーメントは
  
となり,普通は,x > a , x < aによって,場合分けしなければならない.
ステップ関数を用いれば,次のように,1つの関数形として表せる.
  
[2](1)を代入すれば,[1]と同じであることは,直ぐにわかるであろう.すなわち,
x < aではHa = 0であるから,[2]
  
x > aでは Ha = 1 であるから,
  


例題1]下図のような分布荷重をステップ関数を用いて表せ.

  

○デルタ関数

  
図のように,x = aの前後幅 Dで,高さ1 / D,それ以外では0である関数において,D0とした関数,すなわち,
  
となる関数をデルタ関数と呼ぶ.

 一般には,a = 0の場合ディラックのデルタ関数と呼ぶが,ここでは,これを上図のようにx軸方向に平行移動したものを含めてデルタ関数と呼ぶことにする.要するに,
 
である.なお,このような関数は,上の図の極限以外にも作ることができる.

例]大きさPの集中荷重
  q ( x ) = Pda と置けば
  
すなわち,荷重図の面積はx<a0x>aPである.したがって,

 x = aの位置にある大きさPの集中荷重は, q ( x ) = Pda 
  と書ける分布荷重であると見なせる.

 はりの上に大きさWの錘をおいた場合など,実際には荷重が1点に集中して作用することはなく,錘の幅 D の区間に平均して単位長さ当たり,W / D の大きさの荷重ととして,加わっていると考えられる.集中荷重は,幅 D ははりの長さlaに比べて極めて小さいく無視できる,とした場合に相当する.これは,まさに上の極限操作によってデルタ関数を定義したことと同じであり,このことからも集中荷重が上式で表せることがわかるであろう.

○ステップ関数とデルタ関数の関係

ステップ関数の導関数を考えよう.ステップ関数は,x < aでは0x > aでは1の一定値であるから,その導関数は
  x < aおよびx > aでは0

である.また,導関数は元の関数の接線の傾きに一致するから,x = aでは∞である.これは,デルタ関数の値と同じである.また,逆に導関数を積分すれば元の関数になるはずであるが,デルタ関数の定義より

  

であることがわかる.

以上のことから,以下のことが言える

(ステップ関数の導関数)=(デルタ関数)すなわち
  

○デルタ関数の導関数と定モーメント

次にデルタ関数の導関数について考える.

デルタ関数の導関数Da
  
    

デルタ関数は,x < a およびx > a では0の一定値であるから
  x < a およびx > a では導関数の値は0
  x < a からx= aになるとき値は0から∞になるので,導関数の値は+∞
  x = aからx > aになるとき値は∞から0になるので,導関数の値は−∞
これは,x = a - 0の位置に大きさ1のデルタ関数と
    x = a + 0の位置に大きさ-1のデルタ関数の和
と考えられる.

例]大きさmの定モーメント
q ( x ) = mDa mは定数)と置けば,これによる横荷重は
  
すなわち,荷重図の面積W ( x )x = aでは∞となり面積は定義できないけれども,この点を除けば,至る所0である.と考えられる.W ( x )をもう一度積分すれば
  
すなわち,荷重図の面積は0であり,x > aでモーメントmが現れる( mの影響が現れる)ことになる.したがって,

○ x = aの位置にある大きさmの定モーメントは q ( x ) = mDa
  と書ける分布荷重であると見なせる.

ステップ関数との積で表せる関数の積分

T)不定積分

連続関数をf (x),その源関数をF(x)すなわち,dF / dx = f ( x) のとき,Haf (x) の源関数,すなわち

  
がどのように表せるか考える.

  

積分の定義より,F(x)は任意のxに対してHaf (x) x軸とで囲まれる部分の面積を表す関数であればよい.
  x < aではHaf (x) = 0であるから  f (x)x軸とで囲まれる部分の面積=0
  x > aではHaf (x) = f (x)であるから f (x)x軸とで囲まれる部分の面積F (x) - F (a)
すなわち,
  
である.もしも,関数 f (x)f (x-a) の形で表せているとすれば,aは定数として扱ってよく注1)
  
とおけるので,
  
すなわち

  
exp..)
  
 の場合
  
 すなわち,
  

注1)
 

 

例題2]上の積分公式を用いて,例題1のせん断力と曲げモーメントを求めよ.

 

U)定積分

なお,ステップ関数との積となる関数Ha f ( x ) の定積分は,次のようである.

 
exp.)
 b = l - a とおいて
   
   

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