インテリジェントタイヤによる
先進運転支援システムの開発
[高度モビリティ研究所 先進車両技術部門]


■メディアでの紹介
当研究室の紹介がスズキ財団広報誌「やらまいかVol.16」に掲載されました.
以下のURLから紹介内容を確認できます.
【紹介ページ:https://www.s-yaramaika.jp/assets/pdf/backNumber16.pdf
【スズキ財団広報誌 やまらいかHP:https://www.s-yaramaika.jp/

インテリジェントタイヤに関する研究が,「北陸経済研究」7月号(21/6/25発行)で紹介されました.
以下のURLから紹介内容を確認できます.
【紹介ページ:https://www.hokukei.or.jp/app/website/wp-content/uploads/sangaku2107.pdf
【YouTube:http://sv8.mgzn.jp/sys/rd.php?m=O99Ct0lOlbR5PgmvWBO

■ 研究背景・目的

近年、自動車の事故が大きな問題となっており、自動車の安全性の向上を目的として、ABS(Antilock Brake System)や自動ブレーキシステムを代表とした先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)を搭載した先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の開発が進められています。ADASは車輪速センサや加速度センサ、ヨーレートセンサなどにより車両各部の状態を測定することで制御を行っていますが、これらの車載センサのみでは、タイヤと路面間の摩擦力、摩擦係数などを正確に測定することは困難です。
自動車の走行時に路面摩擦係数をリアルタイムに測定することができれば、路面状態に応じた車両制御や、測定した路面情報に基づく運転者に対する注意喚起が期待でき、自動車の安全性を向上させることができます。さらに、システムがすべての運転タスクを実施する自動運転レベル4以上では、路面の状況を検知する技術が不可欠です。滑りやすい路面ではドライバーが慎重な運転を心がけるように、完全自動運転では路面の状況を検知した上でより安全に「走る」「曲がる」「止まる」を制御する必要があります。
以上のことから本研究では、自動車と路面との唯一の接点であるタイヤをセンサとして利用し、路面摩擦係数を測定可能なインテリジェントタイヤの開発を行っています。また、インテリジェントタイヤの開発にともない、自動車の走行状態(制動・旋回)を模擬可能なタイヤ走行模擬装置の開発を行っています。さらに、インテリジェントタイヤにより測定した路面摩擦係数を用いた新たな車両運動制御システムの構築を目指しています。

■ インテリジェントタイヤとは

  路面の滑りやすさを示す路面摩擦係数は、自動車の安全性を高めるうえで重要な情報であり、これを測定可能なインテリジェントタイヤの開発を行っています。本研究では、タイヤゴムやホイールを起歪体として利用し、これらの変形をセンシングすることで、タイヤと路面間の摩擦係数(摩擦力・鉛直荷重)をリアルタイムに測定可能な手法を提案しています。より精度の高い測定システムの開発のため、室内での走行模擬実験をはじめ、FEMによる解析などを行っています。また、実車両走行条件での測定実験では、摩擦係数をリアルタイムに測定可能であることを確認しています。

■ タイヤシミュレーション

 測定高精度化を目指してインテリジェントタイヤのモデル(FEM)を構築し、シミュレーションを行っています。構築したモデルを用いて、走行状態におけるタイヤ・ホイールの変形挙動解明、車両の安全性向上に向けた新たなセンシング方法の開発に挑戦しています。

■ タイヤ走行模擬装置

 タイヤや走行路面の種類、作用荷重が可変なタイヤ走行模擬装置を用いてインテリジェントタイヤの開発を行っています。本装置は、タイヤに周方向摩擦力FX、幅方向摩擦力FY、鉛直荷重Wを作用させることが可能です。タイヤに任意の荷重を作用させた実験を行い、タイヤやホイールに生じる変形の傾向を調査しています。さらに、インテリジェントタイヤを車両運動制御システムに活用するために、自動車の加速・減速状態や旋回状態が可変な新たなタイヤ走行模擬装置の開発にも取り組んでいます。具体的には、自動車の加減速時に変化するスリップ率、および旋回時に変化するスリップ角を任意に変化させた実験を行うことが可能です。本装置を用いて、様々な路面状況・走行状態におけるタイヤ-路面間の摩擦係数の変化傾向を調査し、安全性の高い車両運動制御システムの構築を行います。

スリップ率変化

スリップ角変化

  

車両運動制御システム

 自動車の安全技術には、ブレーキ時のタイヤロックを防ぐABSや、旋回時の車両スピンを防ぐ横滑り防止機能などの先進運転支援システム(ADAS)があります。しかし、以上の技術は路面状況や走行状態によって変化する路面の摩擦係数を考慮した制御は行っておらず、凍結路などで制御を働かせるとかえって危険な場合があります。このような問題は、インテリジェントタイヤにより検知した路面摩擦係数に応じて、車両運動を最適に制御することで解決できます。現在は、より安全な制御法の構築のため、車両運動のシミュレーションソフトにより制御ロジックの効果を検証しています。

シミュレーション動画